2007年03月08日

君といた時間

「ジジ・・・なの?」呆然とルルは黒にゃんこに近づきます。カウンターに座る黒にゃんこの動きが止まりました。カウンターにはまたたび酒と煮干しのおつまみ。じっと頭を垂れ、猫背をさらに猫背にさせて黙っています。ルルはゆっくりと近づき、首輪をしていない背中を見つめました。懐かしい、あの日のジジの匂いです。さっと飛び退き、居酒屋の外へ顔を出しました。「あきにゃん!ジジだよ、ジジがいるんだよ!」その瞬間、あきにゃんの時間は戻りました。ジジが共にいた頃に、ジジとご飯を食べた部屋に、ジジと一緒に寝たベッドに。ジジがすぐそこにいる!「でも・・・」そう、共和国に入ると今までの記憶は消えてしまいます、私のことを覚えていることなどあるものか・・・。あきにゃんは嬉しさと同じだけの寂しさも感じるのでした。いつまでも動かないあきにゃんを見てルルは無理矢理お店に押し込み、ジジの前に座らせました。手にはあの日外した赤い首輪、そっと黒にゃんこのカウンターに置きます。じっと首輪を見つめながら、黒にゃんこは動きません。しかしそのとがった瞳に、光が宿るのをルルは見逃しませんでした。いたずらっ子で甘えん坊で煮干しの好きなジジの目です。彼はまたたび酒と煮干しのおつまみを横にどかし、首輪を手元に引き寄せました。ゆっくりと自分の首に回します。少し疲れたベルト穴にぴったりサイズは合いました。
ゆっくりと息を吐き、もう一度大きく吸い込みます。そして、彼は、ジジはあきにゃんにつぶやくのです。「・・・ただいま」

ニックネーム かつぶし at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする